しかし、この節目の年に、両国関係は「国交正常化以来最悪」と言われるほどに冷え込んでいる。
どうしてこうなったのか。どうしたらいいのか-。
● 硬直化と冷淡では
両国関係が悪化した直接的な原因は、従軍慰安婦などの歴史認識問題と、島根県・竹島をめぐる領有権の問題に集約されるだろう。
ここ数年は特に、こうした課題を慎重に扱うべき政治家が、対外的な影響を軽視した言動で、問題を複雑化させてきたといえる。
韓国側では、2012年に李明博大統領(当時)が韓国の大統領として初めて竹島に上陸した。これで日本の世論は硬化した。
日本側では過去の植民地支配と侵略の歴史を謝罪した「村山談話」について、安倍晋三首相が「侵略の定義は定まっていない」などと否定的な発言をした。韓国国民の反発と警戒を招く発言だった。
安倍首相と朴槿恵大統領は、政権発足から2年以上たった今も単独の首脳会談を行っていない。
朴大統領は「慰安婦問題での日本側の対応」を首脳会談実現の条件にしている。硬直化した姿勢と言わざるを得ない。
安倍首相も、中国とは関係修復を模索しているのに比べ、韓国に対しては総じて冷淡さが目立つ。
片方が「硬直化」、もう一方が「冷淡」では、関係改善は望むべくもない。善隣友好の大局的な見地から行動するのが、あるべきリーダーの姿ではないか。早期の首脳会談実現を望みたい。
●「反」と「嫌」の連鎖
政治の冷え込みよりも、さらに懸念されるのは、両国の国民感情に生じている「負の連鎖」だ。
日本の団体「言論NPO」と韓国の「東アジア研究院」が4、5月に実施した日韓共同世論調査によると、韓国に「良くない」印象を持つ日本人は52・4%で、逆に日本に「良くない」印象を持つ韓国人は72・5%だった。
相手の印象が「良くない」理由を聞くと(複数回答)、日本側は「歴史問題などで日本を批判し続ける」が74・6%、韓国側は「侵略した歴史について正しく反省していない」が74%で最多だった。
このように国民感情が悪化している要因の一つは、相手側のネガティブな行動をクローズアップし続けるメディアの存在だろう。
韓国メディアは、安倍首相が13年に航空自衛隊で練習機に試乗した際、機体番号が「731」だったことに目を付け、旧日本軍で生体実験をしたとされる731部隊と関連付けて批判した。首をかしげざるを得ない報道姿勢だ。
一方で日本の書店に行けば、韓国人の国民性を全否定するような題名の本が平積みされている。
「反日」が「嫌韓」を呼び「嫌韓」が「反日」を招く悪循環だ。相手の等身大の姿を伝えているか。悪感情をあおっていないか。メディアは常に自戒が必要だ。
● 生身の人間通して
関係改善への活路があるとすれば、首都に拠点を置く政治やメディアではなく、両国の地方と地方の直接的な結び付きではないか。
それぞれの首都で日韓関係を見れば、どうしても政治や外交上の対立が焦点になりがちだ。
これに対し、地方では中央の政治的な摩擦はひとまず脇に置き、市民レベルで互いにつながろうとする試みが繰り広げられている。
例えば、福岡市と釜山市の間では、産学の代表らが両地域の連携の在り方を話し合う「福岡-釜山フォーラム」が続いている。
昨年の会議で、福岡側の参加者が「中央の議論は過激な抽象論になりがち。地方で開かれるフォーラムは、具体的で冷静な議論の場となりうる」と述べた。
同感だ。地に足の着いた地方の市民同士で率直に意見交換していく。そんな取り組みが両国関係の足腰を強くすると考えたい。
相手を国として批判する前に韓国人、日本人の友人を互いに1人でもつくってみよう。「嫌韓」「反日」の本やネット情報で何かを知ったつもりになるのではなく、生身の人間を通して相手の国や地域を理解する努力をしよう。
「次の50年」へ向けて、市民と市民による日韓関係の分厚い土台を、地方からつくっていきたい。