日本と韓国が日韓基本条約を締結し、国交正常化を果たして、きょうで50年を迎えた。歴史認識問題などで冷え込んだ関係から脱却し、未来志向で新たな両国関係を築く契機にしたい。
半世紀の節目を、両国民は「過去最悪」と言われる関係で迎えたくはなかっただろう。両政府は、もっと早い段階で関係改善の道を探るべきだった。
サッカーワールドカップ(W杯)共催や韓流ブームで良好だった日韓関係は、2012年の李(イ)明博(ミョンバク)大統領の竹島上陸をきっかけに悪化に向かった。歴史認識問題などで両国関係はきしみをみせた。
最近では、産経新聞ソウル支局長の長期出国禁止問題、さらには、日本の明治産業革命の世界遺産登録に韓国が反対するといった問題が起きている。
中でも、従軍慰安婦問題は、日韓関係の大きなとげとなっている。日本は、日韓基本条約と同時に結んだ請求権協定に基づき、「両国の請求権問題は完全かつ最終的に解決済み」との立場である。これに対して、韓国側は「誠意ある措置」による解決を求めている。
先月には、安倍晋三首相が米議会で行った歴史問題に絡む演説を、韓国国会が糾弾する決議を採択した。友好国の首脳を名指しで批判することは行き過ぎだと言わざるを得ない。過剰な批判は、日韓関係の障害となることを韓国は認識すべきだ。
両国民の感情も互いに悪化を続けてきた。
日本の民間非営利団体「言論NPO」と韓国のシンクタンク「東アジア研究院」が5月に発表した共同世論調査によると、相手国にマイナスの印象を持っている人は、日本で52・4%、韓国では72・5%を占めた。両国民の友好的な感情が損なわれているのは悲しいことだ。
これ以上、対立を長期化させることは、東アジアの安全保障にマイナスである。経済交流でも大きな損失だ。
安倍首相と朴槿恵(パククネ)大統領の日韓首脳会談がいまだに開かれていないのは、異常な事態と言っていい。
ここへ来て、両国政府が、関係改善へ糸口を探ろうと、閣僚級会談を行っているのは明るい兆しだ。
尹炳世(ユンビョンセ)韓国外相が来日し、岸田文雄外相と会談した。両外相は、明治産業革命の世界遺産登録などをめぐって互いに協力することを確認した。一つの成果といえよう。
きょう、日韓両政府は東京とソウルで記念行事を開く。韓国側の行事に安倍首相が出席し、日本側の行事には朴大統領が出席することになった。関係改善につなげてもらいたい。
ことしは戦後70年の節目であり、日韓関係を修復するスタートの年にしたい。
両政府はさまざまな懸案のの解決に向けて知恵を絞り、信頼関係の再構築に全力を挙げなければならない。