本来であれば、記念の日を盛大な催しで祝うところだろうが、そうしたムードが薄い残念な現実がある。あらためて友好の意義をかみしめ合い、対立を乗り越えて関係改善に踏み出す契機にしたい。
日韓両政府は22日、双方の大使館が東京、ソウルで国交正常化を記念する式典を開く。韓国外相らが列席する予定だが、安倍晋三首相と朴槿恵大統領は出席を見合わせる方向。残念である。
韓国が実効支配している島根県・竹島(韓国名・独島)の問題や、旧日本軍の従軍慰安婦問題に象徴される歴史認識をめぐる懸案について、解決に向けた道筋が見えている状況にはない。両国だけの公式の首脳会談は2012年5月以来、開かれてもいない。
それでも50年という「節目」を逃せば、関係改善のきっかけを見いだしにくくなる。一筋縄ではいくまい。だからこそ、糸口になり得る機会を最大限生かし、無為にやり過ごしてはならないのだ。
韓国の尹炳世外相が21日に来日、岸田文雄外相と会談、安倍晋三首相への表敬訪問も模索する。慰安婦問題などの溝は深く、全面解決の道は険しいが、両外相は歩み寄る姿勢で協議、解決に向けた足掛かりを築いてほしい。双方、原則論から一歩も引かず、50年の機会に「決裂」を印象付けては、両国関係がどれだけ深刻かを世界に見せつけることになる。障壁を乗り越える賢明な対応を強く求めたい。
対立の長期化は何ら利益を生まない。両国経済への悪影響はもとより、核開発を続ける北朝鮮への圧力も低下し、さらには結束の乱れが結果として拉致被害者の救出を遠ざける要因ともなりかねない。
関係の緊密化は国力を高め海洋進出を強める中国のけん制にも作用しよう。東アジアの秩序維持を背景とする地域の平和と安定、繁栄にも資するということだ。
両国関係はジグザグの道をたどった。98年、未来志向の関係構築をうたう共同宣言を発表、02年のサッカーワールドカップ(W杯)の日韓共催や韓流ブームで友好ムードに沸いた時期もあったが、前大統領の竹島上陸や慰安婦問題を背景に関係は急速に冷え込んだ。
日本の民間非営利団体「言論NPO」と韓国のシンクタンク「東アジア研究院」の共同世論調査で、相手国にマイナスの印象を持つ人は日本で52.4%、韓国で72.5%に上っている。
関係悪化は韓国による「明治日本の産業革命遺産」世界文化遺産への登録反対や、原発事故を受けた日本の水産品輸入規制の継続強化といった対応とも無縁ではあるまい。
抜本的な解決には時間を要しようが、まずは首脳会談の早期再開に向けて、できることから環境整備を急ぎたい。
今年は戦後70年の節目にも重なる。不幸な歴史を直視し、両政府には「正常化」の一点で知恵を絞ってほしい。節目の日は、友好への意思を明確に掲げ、流れを変えるまたとないチャンスと心得たい。