1980年代以降の韓国の民主化と経済成長、日本の韓流ブームは、日韓を「近くて近い国」にするという期待を抱かせた。だがここ数年は、国交正常化以降で最悪と言われるほどだ。韓国が豊かになり、行き来が増えれば、自然と「未来志向」になると言われたこともあるが、それほど単純ではなかった。
背景には日韓を取り巻く構造的な変化がある。両国は次の50年へ進むため、互いを正確に認識し、共通の目的を再構築していく必要がある。
◇ 協力分野は依然大きい
半世紀前、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の父である当時の朴正熙(パク・チョンヒ)大統領は、5億ドルの「経済協力資金」と引き換えに、請求権について「完全かつ最終的に解決された」とする協定に合意した。植民地支配に対する謝罪と賠償なしの妥協に「屈辱外交」と反発する国民を戒厳令で抑えつけての決断だった。
一方で日本は、韓国との戦後処理をより少ないコストで行う絶好の機会と考えた。東アジアの「反共」体制固めを急ぐ米国の強い圧力が日韓を結びつけたという側面も大きい。
こうした状況は、韓国の民主化と冷戦の終結で様変わりした。韓国では、強圧的な政権が抑え込んできた不満が表面化して「歴史見直し」が語られるようになり、慰安婦問題をはじめとする歴史認識が日韓関係に影を落とし始めた。
未来志向の関係をうたう「日韓共同宣言」(98年)や、サッカー・ワールドカップ(W杯)共催(2002年)での協力といった努力も行われたが、歴史問題の解決につながるわけではなかった。
韓国政府が05年に請求権協定の再検討を行い、慰安婦問題は未解決という判断を出したのも「歴史見直し」の一環だ。韓国政府はこの時、元徴用工の問題は協定で解決済みだとしたが、韓国の司法はその後、韓国政府の判断まで覆すようになった。
「言論NPO」などが今春行った世論調査では、日韓関係を重要と答えた人は日本65.3%、韓国87.4%。一方で、首脳会談を「必要だが、急ぐ必要はない」は日本43・.5%、韓国69.9%に上った。現状を問題だと考えつつ、切迫感は持っていないということだろう。
中国の急速な台頭に対し、日本は警戒を強める一方、韓国は中国に接近した。中国に対するこうした距離の取り方が日韓関係悪化の一因という見方も根強い。
だが、認識が同じでなければ協力できないわけではない。安全保障や経済での日韓関係の重要性は依然として大きい。