しかし、次の数字にこそ注目いただきたい。韓国を「民主主義」と考える日本人の割合は、何と前年比7・5ポイント減の14%。今月1日に第6回公判が開かれたばかりの産経新聞前ソウル支局長問題が影を落としているのは論を待ちません。
そして、日本批判で溜飲(りゅういん)を下げることができたからといってそれが韓国国民に直接利益をもたらすか、といえば、それは不明です。
さて日韓関係と朴大統領と聞くと、必ず(懐かしく?)思い出される人物が私にはいます。昨年8月某日、出張先のソウルで出会ったタクシー運転手のおじさんです。
仕事の関係者とロッテホテルで会った後、タクシーに乗りました。ホテル敷地内には、何台かのタクシーがとまっていましたが、この運転手さんの車に、という誘導というか案内があったので従いました。
あわててシャツのスソをズボンにたくしこんでいた、やせぎすのおじさんは、私が後部座席に乗り込むやいなや、「産経新聞悪いね。支局長も悪いよ。人の国の大統領のことをあんなふうに書くなんてさ」と日本語で“抗議”してきました。バックミラー越しに視線がガチッと合いました。
びっくりしました。「まさか、朴大統領は、このおじさんにまで“告げ口”していたのか」と(笑)。いや、これは冗談ですが、何でこのおじさんは、私が産経新聞の人間であると知ったのだろう。もしかして情報機関に勤める人物? シャツを大急ぎで入れていた姿からはそんな雰囲気は感じませんでしたが、いや、かえってこういう「庶民」を装っている人がそうなのかもしれない、などと勝手な空想にふけりました。
今から思えば、私の行き先がソウル市内の新聞社(産経新聞の支局がある)であることから日本の新聞関係者だろうと推測してたまたま言ってみた、と解釈することもできますし、ひょっとして当局からの何らかの「ささやき」がおじさん側にあった可能性もあります。
何とも言えない気まずい沈黙が車内を支配しましたが、突如それを破ったのはおじさんのほうでした。
「ああ~、私の商売もあがったりだよ。日本からのお客さんが来ないよ。去年の半分以下だよ。私には日本のお客さんがたくさんついていてくれていたのに」
形勢逆転。さきほど驚かされた分も含め、私は(ありもしない)威厳を装い自信たっぷりに答えました。
「え? 日本人が来ない。それはそうでしょう。だって大統領自らが連日日本の悪口を言っているんだもの。自分たちは韓国に歓迎されていないと思うでしょ。だからそういうことは直接大統領に進言してくださいね」
おじさんは苦虫をかみつぶしたような顔をしていましたっけ。
今年は日韓国交正常化50年。おじさんたちにとってはかき入れ時のはずですが、1日の「日韓・韓日賢人会議」でも、朴大統領は両国の懸案について日本側の努力を一方的に求めていました。祝うべき年なのにまだまだ続く「彼女の戦い」に、おじさんたちからのため息が聞こえてきそうな気もします。(kamo)