日米防衛協力に反対する韓国の抗議者ら JEON HEON-KYUN/European Pressphoto Agency

 

日本と韓国が国交を正常化させてから、来週22日で50年となる。ただ、ここ数年の日韓関係は決して正常と言えるものではなかった。

 

日本と韓国は北東アジアにおける米国の同盟国だが、「慰安婦」などの問題が両国の緊張をかき立て、関係は露骨に悪化した。これは地域の安全保障や経済的結びつきを強め、自己主張を強める中国を押し戻そうとする米国の努力に水を差してきた。

 

ただ、韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相が21日に来日するなど、日韓関係には限定的だが雪解けの兆候が出てきた。韓国外相の訪日は4年ぶりとなる。米政府はこの雪解けを利用し、両同盟国をもっと接近させる努力をすべきだ。

 

外相会談が実現するまで、日韓の深い溝は数年続いた。韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は元慰安婦の名誉を回復させると宣言し、日本政府に明確な謝罪を要求してきた。安倍晋三首相はこの問題で歴代内閣の立場を踏襲すると強調。日本政府の関係者は非公式の場で、韓国側が望む謝罪の言葉が完全に反映された声明は新たに出てこないことを示唆した。

 

歴史認識の相違は領土問題にも波及してきた。日韓両国は共に竹島(韓国名・独島)を自国の領土だと主張している。朴氏と安倍氏は世界の指導者と積極的な外交を展開してきたが、両氏が二人で会談したことは一度もない。

 

この結果、日韓の国民は相手に対する感情を急速に悪化させ、特に韓国では戦略見通しの変更につながった。非営利団体「言論NPO」と韓国のシンクタンク「東アジア研究院」が実施した共同世論調査で、韓国人は中国よりも日本に軍事的脅威を感じると答えた。また、将来のある時点で日本との軍事紛争に突入すると予想した韓国人は3割を超えた。

 

これは米国を難しい立場に追いやっている。アジアの同盟国同士の貧弱な関係は地域安全保障と経済協力を一段と困難にする。また、これはさらに重要な地域問題から気をそらせる主因ともなっている。

 

例えば、北朝鮮は5月初めに潜水艦から弾道ミサイルの試験発射に成功したと主張した。一方、米政府関係者は北朝鮮が核弾頭の小型化を進めていることを認めた。北朝鮮の気まぐれな指導者、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記は国内で粛正を繰り返し、国外に対しては武力による威嚇を続けている。韓国の安全保障の目は東ではなく北に向くべきだ。

 

同時に、中国は東シナ海に防空識別圏(ADIZ)を設定するなど独断的な姿勢を強めており、ここに太平洋の同盟国が共同戦線を張ることの重要性が示されている。韓国には台頭する中国を敵に回せない十分な理由があり、中国との関係改善が北朝鮮への圧力につながると期待するのも納得がいく。ただ、中国のADIZは韓国の領空にもかかっており、中国は米国が望む韓国での弾道ミサイル迎撃システム配備を力ずくで防いでいる。これらは韓国でさえ中国の高圧的なプレッシャーから逃れられていないことを如実に示している。

 

恐らくこうした理由から、日韓関係に限定的な雪解けの兆候が出てきたのかもしれない。昨年12月には日米韓3カ国政府が北朝鮮の秘密情報を共有するための取り決めを結ぶことで合意したが、これが日韓関係に変化をもたらす始まりだった。

 

5月には日韓の財務相が2012年以来となる会合を開いた。同月には両国の防衛相が二国間だけで会談し、5年ぶりのハイレベル安保対話が実現した。今や、駐日韓国大使は朴氏と安倍氏との日韓首脳会談が11月までに実現するとの見通しを口にしている。

 

韓国政府の関係者は対日関係について、歴史・領土紛争と安保・経済協力とを分離させる「二重アプローチ」の方向に動くシグナルを出し始めた。ただ、まだ道のりは長そうだ。前出の共同調査では、韓国人の回答者の7割以上が日本に対して悪い印象を持っており、韓国に対して悪い印象を持つ日本人も、良い印象の2倍となる50%以上に上った。

 

この不信感が長引けばリスクが生じる。日本への不満が原因で韓国が中国の手中に入ったということは起きていないが、中国は日韓関係に大きなくさびを打ち込むのにこの機会を利用した。同時に、日本はインド洋から太平洋全域にわたり、各国と安保協力体制を強化している。こうした防衛協力の形成が繰り返されれば、韓国は新たな地域安保体制から取り残される可能性がある。

 

万が一朝鮮半島で軍事衝突が勃発すれば、日本も影響力と潜在的な役割を持つことになるだろう。こうしたシナリオは日韓両政府が話し合うべき安保課題の一つだが、最近までは緊密な交渉が避けられてきた。

 

米政府は日韓関係の改善に重要な役割を果たすことができる。米国のオバマ大統領は昨年、オランダのハーグに朴氏と安倍氏を招き、日米韓3カ国首脳会議を実現させた。今や米政府は北東アジアにさらに広範な戦略構想の青写真を描くのを支援できる。

 

日本も韓国も強力な同盟国だ。ただ、より緊密な協力関係を約束した両国はさらに強くなるだろう。ミサイル防衛や海の安全保障、さらにはサイバー空間や宇宙空間へのアクセス維持といった一般的な協力に至るまで、日本と韓国は個別に進めるより協力した方が多くのことができる。

 

北朝鮮の脅威や中国の挑戦に対抗する最良の方法は、民主国家である同盟諸国が力強く、かつ結束して共同行動できる北東アジアを作り上げることだ。これは歴史問題を放棄することを必要としないが、それにとらわれないことが求められる。

 

朴氏は最近、日本との「協力が求められる分野」で、「未来志向の二国間関係」の発展に注力する必要性を強調した。今のアジアには確かにこうした分野がたくさんある。この限定的な雪解けを足がかりとすることで、米国の同盟は部分の集合体というより平等なつながりであることを示す機会が提供される。

 

(執筆者のリチャード・フォンテーン氏はワシントンの研究機関「新アメリカ安全保障センター(CNAS)」の所長)